2ndアルバム『東京』レビュー by太田浩(タワーレコードオンライン事業本部)
8thアルバム『本日は晴天なり』の発売を記念し、7日間連続で、サニーデイの今までのアルバムについて、いろいろな方々に書いて頂いたレビューを紹介していく<サニーデイ・サービス review week>!
本日のレビューは、2ndアルバム『東京』を太田浩さん(タワーレコードオンライン事業本部)に書いて頂きました!
サニーデイ・サービス
『東京』
1996年2月21日 発売 MDCL1303
¥3,059
1. 東京
2. 恋におちたら
3. 会いたかった少女
4. もういいかい
5. あじさい
7. 青春狂走曲
8. 真赤な太陽
9. いろんなことに夢中になったり飽きたり
10. きれいだね
11. ダーリン
12. コーヒーと恋愛
「’96年、渋谷の青春」
初めて曽我部くんにお会いしたのは確か、「cosmo sports ep」が(私が当時勤務していた)HMV渋谷のSHIBUYAチャートに8位にチャートインしたときに売り場を見に来てくれたのが初対面だったように記憶しています。清潔感のある好青年の印象でした。
それからあまり時間が経たないうちに今でも僕の大好きな名曲「コズミックヒッピー」が発表され、さぁ、そろそろ直球渋谷系のアーチストになるだろうと所属のmidiレコードの方と話したりしていた。ちょうど小沢健二くんのアルバム「LIFE」が嵐のような勢いでメジャーヒット化する頃であった。
そして別件。
その数年前に耳の肥えた渋谷界隈のリスナーたちにその「早すぎた」アレンジの素晴らしさで再評価が高まり、改めてアナログの再発などされたはっぴいえんどの局地的ブーム、レコード会社が仕掛けた流行りではなくクラブや街から起こったこの旧作の再評価。僕も思わず以前輸入盤担当時にやっていたような発掘魂が共鳴した。自分もはっぴいえんどのリアルタイムには遅れて生まれた世代なのでちゃんと聴くのはそのときがが初めてのようなものでもあって。
同じくして小沢くんのソロデビューフリーライヴで開演前にかけられていた金延幸子の「み空」の異例の問い合わせや、アナログ7“で左とん平の「ヘイ・ユウ・ブルース」が売れたり、ムッシュの「ゴロワースを吸ったことがあるかい」の入ったベストCDが旧譜では異例の回転率を叩き出したり。そしてサニーデイサービスの「若者たち」がリリースされる95年になると、はっぴいえんどを大胆にサンプリングしてしまったかせきさいだぁがデビューし、小沢くんもスカパラと小坂忠の「しらけちまうぜ」をカヴァーしたり。ここにきて見事に70‘sと90’sがシンクロした瞬間であった。また、その同時代感をリスナーも歓迎、共感した。
それを体感してもなお、まだ、なんで「街へ出ようよ」で「青春狂騒曲」で「若者たち」なのか?なんで上記往年のアーチストのような洗練感のない昭和のアングラフォーク風なのか?そのときには鈍い僕のような職業音楽人には知るすべもなかった。そして前出のmidiの担当の方から完成した音源(たぶん先にカセットだったような)をいただき聴いたとき、初めて曽我部くんの確信犯的なストーリーがやっと繋がった。
アルバム「東京」は曲順もアレンジも、ジャケットも、完全なるトータリーな「オリジナル作品」だったのだ。ビートルズで言えばサージェント的な、ね。
それからは、この年の桜(=発売)が待ち遠しく、早くお客さんたちに「あじさい」を店頭演奏で聴かせて「今かけてるのは誰ですか?」「ヤバイよねぇ(笑)。これが今度のサニーデイ!やられちゃうでしょ、でしょう?」というやりとりを目に浮かべながらサンプルCDが届くのを待った。そして届いたのはまだジャケのないサンプラーCDでこのダミージャケも今回の「作品」のひとつかい!?って言いたいぐらいシャレてた!(写真)すぐさま、1日の要所要所でかけて現実にそのやりとりを何人のお客さんとしただろう。予約もたくさん入ったなぁ(特典なにやったっけ?また失念)。
<当時の太田手帳の記録>
・新譜一覧表には・・・
2/21発売SDS(イベント)/KOJI1200/カスタネッツ/藤原カセット
2/25発売PLAGUES 3/1発売エレグラ
・予約数一覧には・・・
2/21SDS・200
・ディスプレイ予定表には・・・
2/21SDS・DJブース脇平台
・スケジュール表には・・・
2/25(日)15:00〜SDSイベント
と記載が今も残っていました。
そして待望の発売日、大量に入荷した商品を並べて陳列するとまだ寒い店内をひとあし早く満開の桜にしてくれたのでした、小田島 等さんの絶妙なアートワークとともに。
あぁ、あの日まだ寒い2月に、幸せな(そして忙しい)春の日をすごさせていただきました。そんな、レコ屋冥利に尽きる思い出深いアルバムです。
しかし、僕はこのときもうひとつ別のことも感じ取ってしまいました。
曽我部くんは心底、本当にいやらしいエロいヤツだと!(笑)
この年の夏、僕は渋谷店から本社勤務に異動することになる。
そのときに瀧見憲司さんが企画してくれた「太田浩、渋谷お別れイベント」にサニーデイも有志で参加、演奏してくれました。本当に嬉しかった、ありがとうございました。
そして、今回このレヴューの依頼をいただいて改めてデスクで何回も聴いた。
そこにはまぎれもない96年の青春が詰まっていた。昭和でもレトロでもなく、96年のあのときの春の日の匂いが確実に封じ込まれていた。あらためて素敵な感動をありがとう。
最後に、解散ライブのときに記念に3人にサインしていただいたTシャツ(折ってますが)とCDを掲載させていただき旧サニーデイを葬り、新生サニーデイの前途を祝させていただきます!(笑)
太田浩(タワーレコードオンライン事業本部)
太田浩
1962年生まれ。
'81年新星堂入社、吉祥寺DISK INN No.2からレコード屋スタート。
高円寺DISK INN No,1、新宿店勤務を経て'90年HMVジャパン入社。
日本最初の出店HMV SHIBUYAの立ち上げから従事、渋谷界隈の業界のみなさんと
ともに90年代のジャパニーズポップスを渋谷から発信してまいりました。
のちに本社勤務を経て、03年タワーレコード(株)入社。
現在オンライン事業本部勤務。
1stアルバム『若者たち』レビュー byやついいちろう(エレキコミック)
8thアルバム『本日は晴天なり』の発売を記念し、本日より7日間連続で、サニーデイの今までのアルバムについて、いろいろな方々に書いて頂いたレビューを紹介していきます。
題して<サニーデイ・サービス review week>!
本日初日のレビューは、ちょうど10年前リリースの 1stアルバム『若者たち』をやついいちろうさんに書いて頂きました!
サニーデイ・サービス
『若者たち』
1995年4月21日 発売 MDCL1289
¥3,059
1. いつもだれかに
2. 素敵じゃないか
3. 御機嫌いかが?
4. やけっぱち天使
5. 田園風景
6. 街へ出ようよ
7. 日曜日の恋人たち
8. 約束
9. 昨日・今日・明日
10. 若者たち
「自分は何が好きなのかを教えてくれた大切なアルバム」
僕は大学生くらいの時、頭デッカチな音楽リスナーだった。
雑誌を読んでそれを鵜呑みにして知らないやつにさも自分の言葉のように喋るタイプの。
当時サニーデイは渋谷系チルドレンとか言われてて偽物みたいな書かれ方をよくされていて僕も知らないくせにそんな感じだと思ってた。
そんなある日この「若者たち」が発売された。
僕はいつも行ってたタワレコでそのジャケットに衝撃を受けた。
異常にカッコつけた凝りに凝ったジャケットばかりが並ぶ中ダントツでダサかったのである。
僕は周りの目を気にしながら試聴機に近づきその音楽を聴いた。
良かった。
めちゃめちゃ良かった。
すぐに買ったら良いのに雑誌で偽物扱いされてるというクダラナイ知識と自意識が邪魔してその日はスルー。
でも家に帰ってもあのCDが聴きたくてしょうがなかった。
その日から1週間くらいタワレコに通っては試聴し続け、ようやく買った。
今思えばその時が初めて自分の好きなものを自分で見つけるって事ができた瞬間だった。
どう思われるかより自分は何が好きなのか。
そういう事を教えてくれた大切なアルバム。
僕の「若者たち」には作詞作曲 曽我部恵一のクレジットの横に自分の名前が書いてあります。
やついいちろう
1974年11月15日生まれ。三重県出身。エレキコミックの演出、ボケ担当。
やついいちろうブログ<百年日記>
やついいちろう Twitter
エレキコミック公式サイト<エレキズム>
曽我部恵一プロデュースによるエレキコミックのアルバム『エレベスト』
8th album『本日は晴天なり』より「ふたつのハート」のPVをUPしました。
サニーデイ・サービス
『本日は晴天なり』
2010年4月21日 発売 ROSE 102
¥2,800(税込)
1. 恋人たち
2. Somewhere in My Heart
3. ふたつのハート
4. 南口の恋
5. まわる花
6. 水色の世界
7. 五月雨が通り過ぎて
8. Dead Flowers
9. Poetic Light-まよなか
10. だれも知らなかった朝に
ROSE RECORDSオンラインショップ特典:サニーデイ・サービス オリジナルポストカード 3枚セット
※発送は4月14日より順次開始する予定です。
※他の商品との同時購入&同時発送はできません。ご了承下さい。
ROSE RECORDS オンラインショップでの予約、試聴はこちら
<サニーデイ・サービス TOUR 2010>決定!
ちょっぴり大人になった“若者たち”は、ふたたび街の風景を描く旅へ。
この秋、再結成後初となるワンマンでの全国ツアーが決定しました。
<サニーデイ・サービス TOUR 2010>
2010年 9月3日(金) 東京 LIQUIDROOM
open 18:30 / start 19:30 オールスタンディング info VINTAGE ROCK 03-5486-1099
2010年 9月5日(日) 広島 クラブクアトロ
open 17:30 / start 18:30 オールスタンディング info YUMEBANCHI (広島) 082-249-3571
2010年 9月10日(金) 愛知 名古屋 クラブダイアモンドホール
open 18:30 / start 19:30 オールスタンディング info JAILHOUSE 052-936-6041
2010年 9月20日(月・祝) 福岡 DRUM LOGOS
open 17:00 / start 18:00 オールスタンディング info BEA 092-712-4221
2010年 10月10日(日) 香川 高松 オリーブホール
open 17:00 / start 18:00 オールスタンディング info SMASH WEST 06-6535-5569
2010年 10月11日(月・祝) 大阪 心斎橋 クラブクアトロ
open 17:30 / start 18:30 オールスタンディング info SMASH WEST 06-6535-5569
2010年 10月23日(土) 新潟 LOTS
open 17:30 / start 18:30 オールスタンディング info FOB (新潟) 025-229-5000
2010年 11月3日(水・祝) 北海道 札幌 PENNY LANE 24
open 18:00 / start 18:30 オールスタンディング info マウントアライブ 011-211-5600
2010年 11月22日(月・祝前) 宮城 Zepp Sendai
open 18:30 / start 19:30 1階スタンディング / 2階指定 info GIP 022-222-9999
2010年 11月28日(日) 東京 九段会館 大ホール
open 17:30 / start 18:30 全席指定 info VINTAGE ROCK 03-5486-1099
チケット一般発売日 6月26日(土) ※九段会館のみ7月24日(土)
前売 \4,000 / 当日 \4,500 (ドリンク代別) ※未就学児童 無料
企画 / 制作 ROSE RECORDS
sokabekeiichi.com LIVE http://d.hatena.ne.jp/sokabekeiichi_live/
photo by masafumi sakamoto
『本日は晴天なり』ROSE RECORDSオンラインショップで予約開始!!
サニーデイ・サービス
『本日は晴天なり』
2010年4月21日 発売 ROSE 102
¥2,800(税込)
プラケース仕様
初回盤 紙スリーブケース付き
1. 恋人たち
2. Somewhere in My Heart
3. ふたつのハート
4. 南口の恋
5. まわる花
6. 水色の世界
7. 五月雨が通り過ぎて
8. Dead Flowers
9. Poetic Light-まよなか
10. だれも知らなかった朝に
サニーデイ・サービス、実に、10年ぶりのアルバム。
曽我部の秀逸なソングライティング、バンドが醸し出す独自のグルーヴ、ストーリー性に富んだ作品の在り方は健在です。透明且つ、普遍のサニーデイサウンドが今日も街の物語を鮮やかに映し出します。
"ノスタルジー"と"今"が魔法のように重なり合う奇跡のような作品。
ROSE RECORDSオンラインショップ特典:サニーデイ・サービス オリジナルポストカード 3枚セット
※発送は4月14日より順次開始する予定です。
※他の商品との同時購入&同時発送はできません。ご了承下さい。
ROSE RECORDS オンラインショップでの予約、試聴はこちら
サニーデイ・サービス オフィシャルWEB http://d.hatena.ne.jp/sunny_day_service/
ロングインタビュー2 "サニーデイ・サービス『本日は晴天なり』後編"
いよいよ、最後になりました。
「3人揃ってサニーデイ・インタビュー」グランドフィナーレ。
前回なぜか4曲目という中途半端なところで終わってしまった全曲解説の続きから、
いよいよアルバムの意味やら意図やらというディープな部分へ、話の小舟は流れていきます。
前回の最後にも書きましたが、ここから先はいわば“ネタバレ”的な領域。
アーティストの思惑がかなりはっきりした形で表明されているので、
フラットな状態で作品に接したい方は、どうか読むのを後回しにしていただきたい。
まずは自分が何を感じて、何を想ったか——そこをはっきり味わった後で
改めてここを覗くのが、一番良いような気がしています。
ということで、読み直してみると、
今回ますます曽我部くんとしかしゃべってなかったなスマン!と思える
『本日は晴天なり』クライマックス、ひさびさのマジカル音楽旅行をどうぞトコトン楽しんで!!